歌しりとり

「正直しんどい」では、歌しりとりもやっていましたね。高校生の頃、周囲で大流行(?)しました。修学旅行中は、ずっと歌しりとりやっていました。
フェリーの中でも、バスの中でも。
そのバスの中で、ちょっとした事件がありました。
歌しりとりをやる面々は歌が好きです。だから、自分の番でなくても、回答者が歌いだした歌が知っている歌だと、一緒に歌いだします。
歌しりとり仲間は、それぞれ音楽の好みがバラバラだったのですが、そうすると、皆の声が揃うのは、どんな歌が歌われるときでしょう。
「アニソン」です。それも、往年の。
よって、修学旅行の移動中のバスの中に、突発的に「苦しくったって〜〜」とか「早く人間になりた〜〜い」とか響くわけです。いや、流石にベムはなかったか。だって、女の子だもん。
しかも、歌しりとり隊は、バスの最前近辺に陣取っていました。唐突に響くアニソンに、バスガイドさんが振り返ります。目が合った我々は笑顔で会釈。バスガイドさん微笑。
そしてまた、響くアニソン斉唱。「あんっなこといっいな〜でっきたらいいな〜」ガイドさん、今度は吹き出して振り返りました。
「あ〜、ガイドさんに笑われちゃったよ〜」
「すいませんねえ、うるさくて」
と、おばちゃんのような反応をする歌好き女子高生たち。
「いえいえ、どうぞ楽しんでください」
優しいガイドさん。
「でもガイドさんだけならいいけど、運転手さんは、こういうとき笑えないから辛いよね」
「そうだよ、事故っちゃうかもしれないし」
と、更に続けるおばちゃん女子高生たち。そして一人が運転手さんの方を見て声を上げました。
「あっ!手が震えてる!」
確かに、運転手さんのハンドルを持つ手が震えています。歌好き一味は大騒ぎ。
「やばいよ!これで事故ったらうちらのせいだよ!」
「歌しりとりなんて馬鹿馬鹿しい事故原因じゃ、後ろの席の人かわいそうだよ!」
バスガイドさんは運転手さんに尋ねます。
「…大丈夫?」
「…ちょっとダメかもしれない」
歌好き一味は更に大騒ぎ。
いいカモにされてしまった運転手さんは、事故も起こさず、無事に我々を運んでくれたのでした。あのときはごめんなさい。