明け方の刺客

まだ夜の明けきらぬ時刻、聞きなれた足音が響く。
ついうっかりそれに気づいてしまったことをベッドの中で後悔しつつ息をひそめる自分。
ヤツは最初は控えめにドアの向こうからよびかける。

「にゃあー。」

聞こえない聞こえない。寝たふり寝たふり。
部屋のドアを額で押し開ける気配がする。極力動かない、反応しない。気づかないフリ。
そのとき。

ばりぼりばりぼりばりばりばり……

唐突に耳元で響く不快な音に思わず飛び起きる。…その時点で負け確定。
カーペットで(しかもご丁寧に枕もとの)爪を研ぐというヤツの暴挙に対し、拳を握り立ち上がった自分の足に、ヤツは「にゃーん♪」とご機嫌な声を上げて体を摺り寄せると、ヤツのために設置してある爪とぎ板のほうへ行っておもむろに爪とぎの続きをはじめた。

わかってるなら最初からそこでやろうよ…orz

大体明け方に起こしたところでたいした用はなく、相手が起きたことで8割がた満足しちゃうんだ、あいつは。